2008年09月16日

翻訳せずして翻訳する

翻訳調の文章になる、ぎこちない表現になるなど、翻訳の問題にはいろいろあります。では、一体、なぜこうした翻訳の問題が出てくるかと言えば、それは、ずばり、「翻訳」するからです。

こう言ってしまえば元も子もないのですが、「翻訳」するから無理が出てくるのです。それは、どんな言語も同一ではなく、ましてや、日本語と英語などというと、それこそ正反対くらいの違いがあるため、そもそも「翻訳」して伝えようというところに無理があります。

じゃあ、どうすればいいのか?というと、答えは簡単で、翻訳しなければいいのです。

よく、英語学習においても、「英語を話すときには英語で考えろ」と言われます。まず、日本語で考えて、それを英語に訳しながら話していては時間がかかって会話にならないということですが、不自然な英語表現になってしまうということも言えると思います。

つまり、「翻訳」するのではなく、英語なら英語で最初からライティングする―ということが、自然な英語表現の第一歩なのです。「翻訳くささ」の臭いの元は「翻訳」というプロセス自体に自然的に発生するもので、臭いを元から断つには、翻訳しないのがベストだというわけです。

理想は、英語で情報発信したいと思う人がすべて、英語でライティングすればいいのですが、現実問題、なかなかそういうわけにはいきません。すべての人が英文を理解されているとは限りません。まして、ライティングができるという人も少ないと思われるからです。

そこで、第三者に英語に置き換えてもらう作業を依頼することになるのですが、このときに、「翻訳」ではなく、英文ライティングで作業をしてもらうということがひとつの解決策になるかと思います。つまり、あらかじめ日本語で書かれた情報を頭の中にインプットしたうえで、それを用いて、英語で考えながら英語で表現していくという作業を依頼するということになります。

しかし、翻訳会社さんなどにこういった依頼をすると、「まず翻訳してからライティングをしますので、料金がダブルになります」などと言われることもありますが、これではビジネスとしてはちょっとむずかしいですね。英語できちんと会話できる人は、「英語で考えて英語で話している」わけですから、英語できちんと文章をかけるはずの人であれば、「英語で考えて英語で書く」ということができるはずなのです。さらに言ってしまえば、ことさらに「ライティング」などという言葉を使うまでもなく、「翻訳」という業務はそれ自体、自然なライティングでなければならないと思っています。

もっとも、料金的にはA4の1ページ2000円などという料金ではここまでの作業はできません。現存の翻訳ソフトもまだまだ実用段階ではないため、自然な文章で書かれた翻訳ライティングは人間の創造的な頭脳を使って行う作業です。従って、技術革新で代用できる部分ではないので、昔20万円だったカラーテレビが今は数万円といったコストダウンはできないわけです。文章表現という点に絞って言うならば、「安かろう、悪かろう」というルールが明確に当てはまるというのが、翻訳ライティング業界でもあると考えています。
この記事へのコメント
こんにちは
IT関連の産業翻訳をしています。
辞書、使わせてもらってます。
「英語を話すときには英語で考えろ」、中々、出来ませんが、おっしゃるとおりだと思います。

Posted by t2.yasushi at 2009年05月15日 17:34
t2.yasushiさん、こんにちは。
全然まとまっていない辞書ですが、お使いいただいてありがとうございます。
産業翻訳をやっていらっしゃるとのこと。産業翻訳は厳しい世界ですよね。私もときどき産業翻訳をやらせていただくことがありますが、内容的の難解さもありますが、分量や納期的なことから、なかなか「英語で考えて表現する」といってもむずかしいものがありますよね。余裕がないといってもいいかもしれません。
また、翻訳会社さんが間に入っていらっしゃる場合は、その翻訳会社さんの「品質の考え方」のようなものもあり、字面を追った訳し方が「素直な翻訳」などと好まれる場合もあったりで、とにかく日本語(あるいはソース言語)がもれなく、無難に盛り込まれている文章を求められたりすることもあります。翻訳会社さんは一定の品質をキープしなければならないという命題がありますから、一人の翻訳者が、あまりダイナミックな翻訳をすると困るわけで、これはよくわかります。ビジネスが成り立ちませんから。
ちなみに、これは私の経験ですが、とある代理店で産業翻訳のコーディネータをやっていたころ、すばらしい英文を書く翻訳者がいました。この方は、翻訳会社の社員でもあるネイティブの方でしたが、商品を熟知しているというのもあり、日本語とは全く違った英語表現になって上がってきます。翻訳というよりは、英語でマニュアルを再構築したという感じです。クライアントさんにも絶対の信頼がありましたし、それを英語圏の子会社に送っても、何も手を加えずにそのまま使えるという評価の高い翻訳(というよりライティング)でした。
英語としてシンプル(とくにマニュアル関連はシンプルでなければなりません)で、わかりやすく、日々、そういった優れたライティングに触れて、私もいつの間にか、そういった文章を目指すようになってきました。
現実は理想には遠く、むずかしいものもありますが、英和翻訳であれば、できるだけ良い英文に触れる時間を増やす、翻訳時に調査をする場合もできれば英語の資料を斜め読みするといったことを実践するのが大事かなと思っています。
私も理想と現実がついていかないときもありますが、理想は理想として、あくまでも追求し続けながら頑張っていきたいと思っています。
今後ともよろしくお願いいたします。
Posted by ronde at 2009年05月16日 03:17
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